舟木 志子(ふなきゆきこ)
尾白山は南会津町伊南にある、1398m峰。『会津百名山ガイダンス(歴史春秋社)』という、平成10年に発行された本によれば、登山道が無いヤブこぎの山と記載されているが、その後登山道が整備され、現在では5月下旬に山開きが行われている。また、同著によれば、雨乞いを祈願した神聖な山であり、伊南中学校の校歌にも歌われている等、地元の人々に慕われている山とのことである。登山口は宮沢登山口と小塩登山口があり、途中で合流する。
9月22日にこの山に一緒に登らないかとお誘いがあったのは前日のこと。雨続きだったが、この日は久々に晴れる予報。奥会津や南会津の山なら、どんな山でも登ってみたい私は、お彼岸のお中日前日にもかかわらず、二つ返事で参加させていただくことにした。
当日は8:00に伊南林業総合センター集合。自宅からは1時間もかからないので、登山にしては遅めの出発だ。朝方まで降っていた雨はぴたりと止み、青空ものぞく天気となる。今回は宮沢登山口から入ることになったが、この登山口は駐車スペースが狭いとの事で、集合場所から登山口までは乗り合わせて向かう。悪路だが10分くらいで到着する。メンバーは4人。私以外は経験豊富な健脚の皆さんだ。
直前まで雨だったので、下草などで足元が濡れていることを懸念して雨具のズボンを履いて登り始めるが、全く心配ないよく整備された登山道だ。支障木が撤去された跡や、下草刈りの跡が新しく、感謝しながら歩みを進める。

登り始めから様々なキノコが出迎えてくれる。珍しいカミキリムシの冬虫夏草(とうちゅうかそう:注)を発見したり、赤く色づいたナナカマドの実を写真に収めたり、秋の里山を満喫しながら登る。1時間20分ほどで小塩登山口の分岐にたどり着く。標準コースタイムはそこまで50分なので、だいぶのんびりとしたペースだ。鈍足の私にはありがたい。
その先はキタゴヨウマツの林となり、そこを抜けるとブナ林となる。スラリとした美しいブナ林は、巨木は少なく、おそらく戦後にいったん切られた後に育った二次林ではないかと想像する。


稜線に出てしばらく歩みを進めると、東南側の斜面は低木となり、視界が広がってくる。この斜面が紅葉すると、燃えるように素晴らしい景色となるらしい。遠くに二岐山(ふたまたやま)が見える。山の名前を同定するのは苦手だが、この山だけは形が特徴的なので分かりやすい。急登やアップダウンを繰り返し1278mのピークを過ぎると、そこからいったん高度を下げてから登り返し、ようやく山頂に到着する。

山頂からは、遠方には美しい山並みが広がる。近くには南会津の名山、大博多山(だいはたやま)や唐倉山も見える。昭和村方面に目をやれば、博士山や志津倉山、舟鼻山、御前ヶ岳、駒止湿原も比較的近くに確認でき、大満足だ。
眼下には伊南川沿いに点在する集落と、収穫を間近に控えた稲穂が広がる田んぼ、間近に見える大きな集落は旧伊南村の中心部、古町だろうか。とにかく、美しい。のどかで平和な日本の原風景のような景色に、何故か泣きそうになる。この景色が何十年後も何百年後も眺められる日本で、世界でいて欲しいと願う。
尾白山は、春の花の季節も、紅葉の美しい季節にも、ぜひまた訪れてみたい素晴らしい山だった。また、様々なキノコや秋の自然を楽しむことが出来たのは、知識豊富な同行の皆さんが居てくださったからこそ。山の楽しみをまた一つ広げることの出来た、充実の秋の1日だった。

コースタイム 8:16宮沢登山口出発 9:36宮沢登山口・小塩登山口分岐 11:26尾白山山頂 12:11下山開始 13:51宮沢登山口到着
(注:「冬虫夏草(とうちゅうかそう)」とは、生きた昆虫やクモなどに寄生して育つキノコ(菌類)の総称で、宿主の死後、ミイラ状になった虫からキノコが発生する。一部は漢方などに使用されるなど、薬効もある)