山行記⑪ 秘境の湿原 | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

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山行記⑪ 秘境の湿原 NEW

2026.08.01

舟木 志子(ふなきゆきこ)

 せっかく沢登りの道具を購入したので、もう一度くらいは初心者でも行ける沢に行ってみたいと思っていたところ、会のメンバーのKさんの計画した沢登りのチームにご一緒させて頂けることとなった。行先は檜枝岐村の村道舟岐線から焼沢を遡上し長須ヶ玉山(ちょうすがたまやま)の東部にある湿原を目指すルートだ。
 7月12日、メンバー4人は集合場所から車に乗り合わせて、30分ほどで登り口に到着する。装備を身に着け、7:30頃出発。歩き始めてまもなく、堰堤が出現。数か所あり、いずれも堤の脇を巻いて上部を目指す。上流部になると何ヶ所か小さな滝が現れる。滝の脇の石には苔が付いていて、滑りにくく登りやすいが、その苔がとても美しく、申し訳ない気持ちで踏みしめながら登る。次第に水の流れない枯れ沢となり、そこを辿って行くと最初の小さな湿原に出る。湿原と言うより草原に近い。野生動物の集会でもあったかのように、一部土がむき出しになっていて、無数の獣の足跡がみられた。

苔むす滝を登る

 ここで、地図読みのミニ講習会。紙の地図とプレートコンパスを使い、セオリーに従って操作すると、プレートの矢印は進行方向を指し示す。現在地が分かればとても有効な方法だ。
 コンパスで方角を確認しながら、次の湿原を目指して藪を漕ぎながら登って行く。あともう少しと声を掛け合いながら登っていくと、先頭を歩くメンバーから「わあ!」と歓声が上がる。沢を登り、滝を越え、藪を漕ぎながらようやくたどり着いた湿原は、感激で誰もが声を発してしまう。
 こちらは十分にミズゴケが発達した高層湿原の様相だ。広々とした湿原には、ワタスゲ、モウセンゴケ、ツルコケモモなどが咲き、トンボが飛び交う。周りにはオオシラビソの林がぐるりと取り囲み、静寂の中に鳥の鳴き声がこだまする。人の手の入らない原始の姿を残す湿原は、神々しいまでに圧倒的な存在感を示す。時間に追われ、気持ちにも余裕のない日常だが、秘境の湿原ですっかり癒された。ずっとここに居たいが、そういう訳にもいかず、昼食をとり下山。

秘境の湿原

 下りではGPSで現在地を確認しつつ、尾根を目指して藪をかき分けながら行く。笹藪はどうにか歩けるが、細木の藪はなかなか手厳しく行く手を阻む。それでもどうにかこうにか先に進み、尾根筋に出る。その先も、ルートの確認をしつつ、尾根を外れないように下っていく。歩きやすいところと藪を交互に繰り返しながら、ようやくゴールできた。午後から雨予報だったが、運よく雨にも降られずに無事に下山しほっとした。

 人生2度目の沢登りは、静かで美しい秘境の湿原に出会えた感動で、終わってみれば沢の緊張も藪の困難もどこへやら。新たな山の魅力に気付かされた1日だった。
  
コースタイム 7:32出発 10:00湿原①到着 11:00湿原②到着 14:08ゴール