山行記⑨ 浅草岳 | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

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山行記⑨ 浅草岳 NEW

2026.07.15

舟木 志子(ふなきゆきこ)

 浅草岳は越後山脈に位置し、新潟県魚沼市と只見町にまたがる、標高1,585mの秀峰だ。越後三山只見国定公園に属し、登山道は新潟県側から2ルート、只見町側から2ルートの計4ルートある。この山は雪国の新潟や奥会津の中でも、特に多雪地帯であり、他の山が芽吹きはじめても、いつまでも残雪が白く輝いている。また、奥会津側から見ると、尖った山頂の、左側はやや急で、右側はなだらかにどっしりとすそ野を広げた、非対称の美しい山容で、裾野にはブナの原生林の森が広がっている。
 いつかは登りたいと思っていたのだが、今年の5月に蒲生岳に登った際に、残雪の浅草岳を眺めてからは、今年こそはあの稜線を歩きたいという思いを強くしていた。当初はソロ登山と思っていたが、友人と車2台で田子倉の只見沢登山口から登り、入叶津に下山という縦走のコースを歩くことになり、前夜は嬉しくてなかなか寝付けなかった。

蒲生岳から浅草岳を望む

 とは言え、いつの間にか熟睡したようで、朝の2時にセットした目覚ましで飛び起きた。おにぎりを握り、水筒に水を入れ、荷物の最終チェックをし、3時過ぎに出発。入叶津で友人と合流し車を1台置いて登山口の田子倉ダムの先、只見沢登山口に向かう。
 山開きなので、テントが設置されていて、入山届などを記入する。バッチを頂いて登山開始。はじめは沢沿いの道を行く。山開きを前に、苅払いや、支障枝の除去、仮橋の設置など、危険の無いように登山道の整備をしてくださっていて、とても歩きやすい。感謝しつつ登っていくと、太いブナが次々と現れてくる。今年はブナの実がたくさん実っていることを観察。徐々に急な登りになって来たところに、朝日が差し込み暑くなってくる。息が切れ、どこから湧き出て来るのかわからないくらいの汗が身体中から流れ出る。喘ぎながらも登っていくと、「剣が峰」にたどり着く。眼前に鬼ヶ面山(おにがつらやま)の荒々しい雪蝕地形が美しく眺められる場所だ。ここでザックを下ろしてしばし休憩。
 凍らせたゼリーを持ってきたが、シャーベット状の食べごろになっていて、火照った身体に沁み込む。そして、ここから先が大変だった。岩場の急登は、前日までの雨で滑りやすく、斜面を横切る道は足場が悪く滑り落ちそうだ。ロープや木の根、木の枝などにつかまりながら、慎重に歩みを進める。急登と蒸し暑さと緊張、それに空腹も重なり、徐々に気力も落ちてきたので、何とか腰を下ろせそうなところを見つけて休憩する。友人のザックから出てきたのは大きなどら焼き。たっぷりあんこの詰まったどら焼きの美味しかったことと言ったら。甘いもので再び元気になり、もうひと頑張り。ヒメサユリの鮮やかなピンク色にも励まされ、10:40に山頂到着。
 登山開始から5時間の登りはきつかったが、見回せば、田子倉ダムが手裏剣の様な形に見え、遠くの山もぐるりと見渡せて、ご褒美のような景色が広がっていた。
ゆっくり昼食をとり、十分休憩してから、いよいよ楽しみにしていた入叶津への下山だ。山頂付近では見ごろのヒメサユリがたくさん咲いていた。そのすぐ下は「天狗の遊び場」と言われる、広大な草原が広がる場所に着く。まだ雪渓も残っていて、緑と白のコントラストが美しい。その先もたくさんの花も咲いていて、楽しみながら下山する。

ブナの杜

 沼の平の分岐の辺りから平石山の周辺は、立派なブナの大木が立ち並ぶ杜となる。この辺りは傾斜が緩いのでとても歩きやすい。ブナの落ち葉が敷き詰められた道をサクサクと歩くのはとても軽快で、楽しい。美しいブナの大木を楽しみながらも、山頂から8キロというロングコースの下りは、徐々に疲れが出てくる。最後まで気を抜かずに歩こうと声を掛け合いながら15:50無事に下山。
登山開始から休憩込みで約10時間。よく頑張ったと、今日の健闘をお互いにたたえ合う。友人の車がおいてある朝の登山口のところまで行く間の短いドライブでは、早くも次の登山はどこにしようかと話は尽きない。きつかった記憶が楽しい思い出に変換された1日の締めくくりだった。

コースタイム:5:45只見沢登山口 出発 8:38剣ヶ峰 10:40山頂 11:40下山開始 14:00沼の平分岐 14:30平石山付近 15:55入叶津登山口へ下山

(※ 田子倉は、一般的には「たごくら」と言いますが、地元の方は「たぐら」と言うそうです。)