舟木 志子(ふなきゆきこ)
高館山周回
下中津川にある高館山は、会津百名山の一つで、登山口は自宅のすぐ近くにある。山頂の少し手前には御愛宕様が祀られていて、下中津川集落を見守ってくださっている。御愛宕様は、その昔は山頂にあったが、山林火災で焼けてしまい、今の場所に移されたとの事らしい。山頂にはその跡と思われる、崩れた石積みが見られる。6月23日は祭礼日で、平成の初期のころまでは祠まで地区の普請で刈払いが行われていたと記憶しているが、今では沢添いにあった農地は作る人もなく、その先の愛宕様までの道もすっかり荒れてしまった。
今から70年ほど前の昭和20年代頃までは、地区の青年たちが、お酒や米、鍋、漬物や味噌などを背負って登り、お籠りしたと、昔を知る翁に伺ったことがある。娯楽の少ない時代、仲間と共に一晩を過ごすのは楽しみだったに違いない。
この山に初めて登ったのは、平成元年。結婚して間もなくの頃だった。そしてそれから30年以上が経過した令和4年、再びこの山に登ることが出来た。
私は令和4年の春から、若いころに少しかじった登山にはまり、ふらふらとあちこちの山に出かけては、花を愛でたり景色を楽しんだりしていた。そのころから地元の山にも登りたいと思っていたが、幸いにも一緒に登ってくださる方がいて、その後4回ほど登頂した。
今年の2月には、高館山の山頂から西側の尾根伝いに周回し、上平集落に下山するルートで歩く計画をされた方とご一緒させていただく機会を得た。計画を見ると、「地蔵岩」と呼ばれる大岩の上、かなり切り立った尾根を歩くコースだ。毎日眺めている稜線なので、そこを歩ける嬉しさと、初めてのルートへの緊張を抱きつつ、当日を迎えた。
当日は快晴。雪は固く締まっていて歩きやすい。スノーシューがサクサクと良い音を立てる。もともとの登山道はしばらく沢沿いを行くが、雪があるため見晴らしの良い尾根筋を歩く。途中、御愛宕様を参拝する。祠は年月を重ね風雪に耐え、杉の木立の中に凛然とした佇まいで建っている。中には優しいご尊顔の御愛宕様が祀られている。手を合わせ「今年もお会いできて嬉しいです」と心の中で申し上げる。その後は山頂までの急登を攻略し、歩き始めから約2時間で山頂に到着。見晴らしは木々に阻まれ今一つだが、それでも葉が落ちた木立の間からは、志津倉山、博士山、大仏山、舟鼻山、御前ヶ岳、遠くには浅草岳や本名御神楽なども眺められる。

雪が柔らかくなってきたので、私はかんじきに履き替え歩みを進める。かんじきは軽くて足さばきが良く、急登や急下降でも歩きやすい。雪質や雪の深さによってはスノーシューの方が良い時もあるため使い分けているが、この日はかんじきの方が良いと判断した。

雲一つない青空と2月とは思えない陽気に、一枚、また一枚と衣服を脱いで調整するが、それでも汗が流れ落ちる。思いのほかの急登、急下降に息を切らし、時に慎重に歩みを進める。時々休憩し息をととのえ、地図を確認する。尾根がいくつかあるため、間違えないように歩く。紙の地図の他、スマホに登録してある登山アプリの地図も活用する。

尾根を伝い、いくつかの頂を越えて、地蔵岩の上あたりに出る。下中津川の集落が良く見渡せるビューポイントだ。いつも眺めているあの稜線の上にいるのだと思うと、感慨深い。その後は、今日の核心部の細尾根だ。想像通り両側が切れ落ちている尾根は、踏み外し厳禁。尾根筋は立木と藪に阻まれる。一歩一歩確認しながら慎重に歩く。最後に急下降して上平集落に出る。家並みが見えた時はホッとした。
今回は私を含め三人で歩いたが、私以外のお二人は登山歴が長く、知識も経験も豊富な方々で、大変心強く、また色々と勉強させていただくことができた。
コースタイム:昭和村阿久戸高館山登山口7:05 御愛宕様8:40 山頂9:05
地蔵岩付近12:45 上平集落到着13:40