菅家 洋子(かんけようこ)
6月14日、東北地方が梅雨入りした。
私は昭和村内にある交流・観光施設「喰丸小」で、2021年から始めた出店本屋「燈日草」の店番をしながら、その報を聞いた。外ではまさに雨が降っていて、青々としたイチョウの葉がしずかに揺れている。これから始まる梅雨、これくらいのやさしい雨が続けばいいのにと思う。お客さまが途絶え、誰もいない教室。かすかな雨音が耳にふれる。いい時間だな、と思う。

この日は、今年はじめての「草花ブーケ」販売日。我が家で栽培している草花、そのとき咲いているものを合わせて花束にしている。前日の夕方、準備をした。摘んできたのは、西洋オダマキ、キイチゴ、アルケミラモリス、クナウティア・アルベンシス、ローダンセ、トリフォニウム・バニーズ。花束を作る基本もよく分かっておらず、うーんうーんと悩みながら花を合わせていく。久しぶりだったので余計に手こずり、5つ作ったらへとへとになった。何となくいい感じに出来たとは思うけれど、あまり自信はない。しかも翌日は雨予報。客足も鈍く、ほとんど残るかもしれないなと思った。
そして当日。ブーケはなんと午前中で売り切れてしまった。びっくり。みなさん、えらく褒めてくださって、うれしくなった。「花束がほしくて来た」という方、ふたつも買ってくださる方、「持っている人を見たら欲しくなって」という方も。こんなに嬉しそうに花束を手にしてくださる方たちを前にして、これから次々に咲いてくる色々な種類の草花を、みなさんに届けたいなぁ、喜んでもらいたいなぁという気持ちが強くなる。

夏に向けて花農家の仕事が忙しくなると、「燈日草」を開くことが難しくなる。豪雪地帯のこの場所では、畑仕事のできる季節は貴重で、だからこそ、この時期は精いっぱいに働いて稼がなくてはならない。そんな中、何とかしてその合間に「燈日草」を開く。仕事を残したままの後ろめたさを感じながら喰丸小に出かけた帰り道にはいつも、この時間が自分にもたらしてくれるものについて考える。本や花を介して出会った人、交わした言葉が、ひとつひとつ光になって、心にともっていく。
2021年から、戦争について考え学ぶ機会として続けている「ヒロシマ展」をという催しがある。第5回となる今年は、沖縄戦の戦没者の遺骨を40年以上にわたり収集し続け、遺骨土砂を使った辺野古の埋め立てに抗議の活動をされている具志堅隆松さんの姿を追ったドキュメンタリー映画「骨を掘る男」上映会を開く(後援:昭和村教育委員会)。これも、仕事の合間というか、仕事を後回しに後回しにしながら準備を続けてきた。どうしてこんなことを続けているのか分からない。だけど、やらなくてはいけないことだという思いがある。
映画の主人公である具志堅さんからは、当日ご参加くださったみなさんへのメッセージも預かっている。6月23日沖縄慰霊の日を前に、沖縄戦で犠牲になった方々への追悼の機会として、この大切な映画をひとりでも多くの方と鑑賞できればと思う。
〇開催日 2025年6月21日(土)
〇上映作品 「骨を掘る男」
(監督:奥間勝也 2024年 115分 配給:東風)
〇場所 昭和村公民館ホール
〇上映時間 ①9:30~ ②13:30~ *30分前開場
〇鑑賞料金 寄付制 (大人の方1,000円〜を目安にお願いいたします)