【きかんぼサキ第2部】布団をめくれば | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

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【きかんぼサキ第2部】布団をめくれば NEW

2025.04.01

渡辺 紀子(わたなべのりこ)

 サキノは女性ドライバーの先駆けだった。誘われて町の商工会に入会するのだが、その活動でもサキノは重宝な存在だったらしい。会議や催しで近隣や福島市等へ出掛けなくてはならない時、サキノが運転手となることがよくあったという。なにしろ、当の本人は運転に自信がある。誰かを乗せていくことなど、全く抵抗がなかったとみえる。地元に限らず、知り合った近隣の商工会メンバーからも、
「サキノさん行くなら乗せてって」「サキ、ええべ(行くべ)ええべ」
 そんな風に頼まれることが時々あったようだ。
「運転はなんてことねぇ、知らねぇ人と一緒でも何でもねぇ。酒も飲む。宴会もなんぼでも付き合える。したから、どこさ連れてってもさすけねぇ(大丈夫)って事だったんだべ」
 サキノはそう語る。

 ある年の研修旅行は磐梯熱海が宿泊先だった。夜の宴会も終わり、飲み足りない人たちはさらに郡山の街へ飲みに行った。勿論サキノも一緒だった。サキノと同室の二人は出掛けずに部屋にいたところ、かなり酔ったサキノが戻って来たという。全員揃ったので部屋の鍵を掛けて三人が休もうとした、その時だった。部屋のドアをドンドン鳴らす音がする。

「開けてくろ。いまちっと飲むべ」
 同じ商工会の男性たちだった。仕方なく開けると、二人の男性。酔って勢い止まぬ男性に連れられ、もう一人も付いてきた様子だったという。その時サキノと同じ部屋だった佐々木さんが、まるで昨日のことのように語って下さった。
「あの時はサヨ姉が鍵開けちゃったのね。それで入って来たよっちょあんつぁが私の布団のとこに来て、“オレもいっぺんに寝せろや。布団さ入れろ。”って来たの。私は“絶対ダメ!”って入れなかったのね。あんまりしつこく来るから“あっちさ行って!”って跳ね返したの。サキノさんは部屋に戻るとすぐ布団に入ってたんだけど、私に跳ね返されて、今度はサキノさんのとこに行ったのよ。そしてそのまま布団をガラッとめくったの。“なんだなんだ!!だめだこりゃ!”って急にそこで大人しくなったから、私も何だろう?ってサキノさんのとこ見に行ったの。そしたら、まぁたまげたわ。サキノさんコロコロ裸で寝てたのよ。私もコロコロ裸で寝てる人見たの生まれて初めてだったから、もうびっくりなんてもんじゃなかったわ。よっちょあんつぁも何だか調子狂ったようになって、サヨ姉が“オレ抱っこしてやっから、こっちさこぉ!”なんてからかっても、もうだめ。サキノさんはそのまま起きなかったから、四人で少し冗談話なんかした後、二人は帰って行ったわ」
 子供の頃から寝る時は裸。それが一番楽、とサキノは言っていた。でも、他の人との外出先でもやっていたとは…。確かにやりそうだ。
「朝になったら“サキ、早くまんまにこぉ”って呼ばれたから会場に行ってみた。そしたら男の人たちが“サキ、いたずらしらっちぇねえか?なんだって、にしゃ(お前)たいもん(大物)だな”なんて言われてな。裸で寝てたくれぇでたまげてんだなぁって思ったが、それから裸で寝んのが有名になったのや。ははは」
 突然素っ裸を見せられると、人はかえってお手上げになってしまうようだ。よっちょあんつぁも生きていたら、きっと衝撃の瞬間を語ってくれたに違いない。

 佐々木さんはサキノを交えた気の合う四人組での思い出も語って下さった。
「ずっと昔、四人で須賀川の牡丹園に行ったのね。入ってすぐサキノさんだけがトイレに行って、私たち待ってる時だった。知らない男の人たち来て“仲間に入れてくれないですか?一緒に行動してもいいですか?”って、話しかけてきたの。私は客あしらいで慣れてるから“いいですけど、じゃあ一緒に見て歩きますか”って言ってみた。そんな話をしてたところで、サキノさんがトイレから出てこっちに向かってきたの。そしたら、その四人の男の人たち“あの人はあんた達と一緒の人?あの人あんた達のボス?”なんて訊いてきた。その時のサキノさんパンチパーマみたいな髪型で、そしてポケットに手入れて歩いて来たりしたから、何だかその筋の人みたいだったの。私はとっさに“私たちのボスです”って普通に答えたわ。そして戻って来たサキノさんも、すぐボスになってくれてね。私たち誰もほんとのこと言わず、ずっとうまく合わせてやってたの。まぁ男の人たち、面白い面白いって言って全然離れない。こっちはそろそろ離れてもらいたかったんだけど、結局牡丹園はずっと一緒だった。やっと出るとこでサイナラ出来たってわけ。あん時も楽しかったわ」
 サキノの強烈な出で立ちを、嫌がらず楽しんで下さっている。こうした大らかで愉快な仲間に囲まれ、パンチパーマでボス気取りのサキノはご満悦で牡丹園を闊歩していたに違いない。でも、果たして四人の即興芝居はここだけだったのだろうか?なんとなく息の合った様子、何やら他でも楽しんでいたように思えて仕方ない。