ソバヤキモチとカンネリボー | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

奥会津に生きる

ソバヤキモチとカンネリボー

2024.03.01

鈴木 サナエ(すずき さなえ)

  昭和40年代後半、私は初めて「ソバヤキモチ」を見た。定かではない記憶だが、ちょうど今頃、2月の冬の時期だったと思う。20代の私は、アルバイトをしていて、隣の席の男性のお弁当が「ソバヤキモチ」だったのだ。男性は、食べ始める前に
「にしゃ こんなの食った事あっか」
と言って、見せてくれたのが、とても大きなおにぎりサイズのソバヤキモチ二つだった。食べ始めたソバヤキモチの中の具は、たっぷりと緑の『漬け菜煮』と『漬け菜納豆』が入っていて、ツヤがあって、それはそれは美味しそうに見えた。蕎麦も、漬け菜も、勿論納豆も、自家製だったのだろうと思う。蕎麦好きで、食いしん坊の私は、思わず「旨そうだなあ」と、言ってしまった。男性は「そうがやあ」と照れていたが、その後、ソバヤキモチのお弁当を持ってきた気配はなかった。当時も、長野の「オヤキ」は有名だったので、私はそれに似ているなあ、と思って見ていた。

 その後、数年して姑がソバヤキモチを作ってくれたが、姑のソバヤキモチは小さく、上品で、家の皆の好みに合わせて、いつも『こし餡』入りだった。
今ではソバヤキモチも地元のY商店が商品化して販売するようになった。具は、餡子、野沢菜、フキノトウで、出張販売の時などは、パック入りの商品の他、焼きながら、アツアツも販売しているようで、人気商品の一つになっていると聞いた。
家庭での具はその他に、ヒジキやオカラの煮物、あるいは出来すぎたピーマンやナスの油炒めだっていいかも知れない。しかし雪国でのソバヤキモチの具の王道は、やはり、秋に強い塩で漬けた青菜の塩を抜いて作る、『漬け菜煮』だと思う。他の郷土料理と同じように、あまり作る人が居なくなってしまったソバヤキモチだが、あのでかい漬け菜煮入りのソバヤキモチに挑戦してみようと思っている。

ソバヤキモチ

<ソバヤキモチの作り方> 普通サイズ
材料
 そば粉
 もち粉
 具   (餡子 漬け菜煮 等)
作り方・・・普通サイズ
① 具はそれぞれに作って、30gぐらいの同じ大きさに丸めておく。 
② こね鉢を用意し、そば粉、もち粉をいれ、熱湯を入れてよく煉る。
③ 鍋に熱湯を準備して、煉った生地をちぎって入れ、茹で上げる。
④ 茹であがったら、もう一度こね鉢に入れて煉る。
⑤ 煉りあがった生地は80gぐらいのサイズに切り揃えておく。
⑥ 生地を手のひらにのせ、伸ばして、真ん中に具を入れて包み込み、形を整える。

もち米を入れたそば粉はツヤがあってよく伸びるので、包み易い。
出来がけはそのままで美味しいし、少し硬くなったら、焼いて食べると、また香ばしくて、美味しい。
これも、昔はユルリ(囲炉裏)で焼いて灰を落としながら食べた、と昔の生活を知る人は、懐かしそうに語ってくれた。

<前回のカンネリボーのお詫び>
いつもカンネリボーのこと等、昔のことを教えてくださる先輩の方に原稿をお持ちしたところ、
「カンネリボーは<ネリボ>のことだからカンネリボウでは間違っている」
との指摘を受けた。
そもそも、私は<ネリボ>の言葉を知らなかったが、ソバガキをネリボと言っていたらしい。寒に食べるネリボだから「寒ネリボ」となる。そうか、ボウでは棒を連想し、何やら腑に落ちなかったが、これで納得できた。それでも、なぜ、寒ネリボーだけは「ネリボー」と伸ばすのかは謎のままだ。
というわけで、申し訳ありません。カンネリボウはカンネリボーと訂正させていただきます。