【わっさな暮らし】 気軽に、身近なお寺に | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

奥会津に生きる

【わっさな暮らし】 気軽に、身近なお寺に 

2023.09.01

藤田明愛さん(昭和62年生 柳津町)

お寺は日本中どこにでも、たくさんある。本当にたくさんある、気がする。
日常の風景の一部でありながら、しかし私にとっては、お寺について学ぶ機会もないまま、あまり縁のない、実は不思議がいっぱいな存在だったりする。

藤田さんは16歳で父から僧名明愛(みょうあい)(本名明愛(あきな))を授かり得度し、真言宗豊山派月光寺の副住職を務める。
小さい頃から何となく見ていた父親の住職としての生き方に、自然と共感を覚えていったという。
「地域のため、お寺に来る人のために奉仕する父の姿に、魅力を感じたんです。全然抵抗はなく、自然にお寺を継ぎたいと思って得度しました」。

大学に入って仏教の勉強を始めると、男性が多くを占める中、女性であることにコンプレックスを感じる経験もしたという。
「お経を合わせて唱えるとき、声の高さを合わせるのに苦労しました。その時は、なんで女なんだろうって悔しい思いが強かったです」。

その後修行を続ける中で、東日本大震災、友人の突然死、体調の変化などから、不安障害に悩む時期があったそうだ。
もやもやどろどろした不安の最中、震災のチャリティ活動の際、被災地の現状を法話に交えて人前で話す機会があった。
聞いてくれた人からの声がけが大きな力となり、前向きになれるきっかけになったという。
「自分自身が他人に話して伝えることで、仏様の教えに救われました。仏様の教えには、ひとりひとりの悩みに寄り添って、心に響くような力があることに気づいたんです」。
1000年以上続く仏様の教えには、誰かの心を救うヒントやきっかけがあると確信する。

「お寺に、もっと気軽に来てもらいたいです。ちょっと塞いでいることがあっても、お寺に来ると気持ちが晴れるよねって存在になりたいと思っています」。
そのきっかけ作りとして、今は定期的にご詠歌の講習会や写経、写仏をしている。
仏様の教えを唱えながら理解できたり、無心で向き合うことで感じたり、少しでも楽しみながら仏教について学ぶ機会を模索している。

お寺の中にあるあれこれ、作法の意味合い、実はわからないことだらけだが、正直質問しにくい。
(こんなこと住職に聞くのは失礼だよね。教養がないようでちょっと恥ずかしい…。同性で歳が近いせいもあるかもしれない。)
そんな私の心境を察して、明愛さんは私の粗末な質問にも丁寧に応えてくれる。
へ~ぇの連続で、今まで見えていなかったお寺の風景が広がった。

「私だから、できる役割があることに気づいた気がします。今は自分の色を大切にする時期だなと感じています」。
檀家さんに法話を説くとき、仏様の教えを自分事として受け入れやすいように、ご自身が納得したことを、実体験を通して言葉を選び、心を込めて伝えるように心がけているという。
「聞いている方の、誰かひとりでも助けになったり、気づきのきっかけになれたら嬉しいと思っています」。

親しみやすい明愛さんの存在に、お寺が、お坊さんが、少し私に近くなる。
たくさん迷いながら、気づきながら、明愛さんは仏様と私たちの間の、終わらない修行に日々向き合うのだろう。