【会津の縄文をのぞいてみよう】6.黒いダイヤ~黒曜石 | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

奥会津を学ぶ

【会津の縄文をのぞいてみよう】6.黒いダイヤ~黒曜石 

2023.08.01

長島 雄一(ながしまゆういち)

6.黒いダイヤ~黒曜石

 石器の材料となる石についても見てみましょう。例えば会津坂下町内の遺跡から出土した黒曜石は分析の結果、新潟県新発田市の板山産であることが分かっています。磐梯町・猪苗代町にまたがる法正尻遺跡でも板山産のものが見つかっています。これらは阿賀野川(阿賀川)をさかのぼるルートで会津に入ってきたものでしょう。
 また只見町では明治大学黒曜石研究センターに依頼し、町内から出土した黒曜石の産地同定を進めていますが、その結果は長野県産(西霧ケ峰系)20点、栃木県産(高原山系)7点、新潟県新発田市産(板山系)3点でした。つまり只見町では長野県産が最も多く、次いで栃木県・新潟県からも黒曜石が運び込まれていたということがわかりました。また只見町窪田遺跡、三条市の長野遺跡から発見された黒曜石には板山産と高原山産のものがあることも判明しています。板山産黒曜石の会津への流入ルートは八十里越でしょうか? 阿賀野川(阿賀川)を経由してから只見川をさかのぼるルートでしょうか? また後世、越後の塩が運ばれてきた新潟県阿賀町柴倉から金山町上田に至るルートの可能性はないのでしょうか? 
 一方、栃木県高原山や長野県産の黒曜石は南会津町田島・伊南・舘岩や下郷町でも見つかっています。高原山の黒曜石は那須から栃木・福島県境の山王峠を超えて田島~只見~八十里越~三条市へともたらされた可能性があります。
 このように会津地方と他地域との交流については、阿賀野川(阿賀川)沿いのルート、八十里越、六十里越、那須~田島~只見~新潟ルート、旧舘岩村と栃木県湯西川方面を直接結ぶルート、檜枝岐を通るルートなどが考えられます。また石器の石材となった頁岩については山形県からのルート、新津周辺などから産出する天然アスファルトの精製場所(遺跡)を含めた新潟からのルートなど、これらは今後さらに追及すべき課題として残されています。

複式炉

 さて少し話題は変わりますが、福島の地域色の典型的な例として、中期末に発達した複式炉と呼ばれる大型の炉があります。複式炉をテーマにした論考も数多く発表され、2005年に行われた日本考古学協会福島大会でも主要な研究テーマとなりました。
 複式炉の出現の理由や詳しい用途はまだはっきりしていません。トチやドングリなどの堅果類をアク抜きするための大量の灰を確保するため、あるいは中期末の寒冷化に対応して、大型炉の必要性が生じたためなどと説明されています。分布の中心は福島県で、会津地方では法正尻遺跡、会津美里町十五壇・油田遺跡、会津坂下町大村新田・北川前・大門・花畑遺跡、西会津町上小島・小屋田遺跡、喜多方市下屋敷遺跡、柳津町石生前遺跡、下郷町下平遺跡、金山町石神平遺跡、昭和村和久平遺跡など多くの遺跡で発見されています。