舟木 志子(ふなきゆきこ)
博士山 3月22日
博士山の山頂は昭和村、柳津町、会津美里町の境目に位置する1482m峰。会津盆地から眺めると、ちょうど磐梯山の反対側の南西方向にあり、どっしりとした落ち着いた山容で、春はいつまでも白く雪が残る山だ。
この山に初めて登ったのは約40年も前の、まだ初々しい10代の頃だ。旧国道博士峠の頂上から長靴で登った記憶がある。そのころから環境問題に取り組んでいた昭和村の若者たちに案内され、友人たちと共にブナの大伐採の跡を見学に登ったのだった。
その次に登ったのは、それから三十余年も経った今から4年前だ。5月中旬の山開きの日だった。若いころ好きだった山登りを再開し、2座目に選んだのは地元の博士山。登山道には様々な花が咲き、ツバメオモトという白くて可憐な花や、ピンクのイワカガミなどが見ごろだった。登山口は柳津町の大成沢集落から入ったところで、現在のところ整備された登山道は、ここから登り周回するルートしかない。そのため一般的には博士山は柳津町の山と認識されている。
しかし、である。あくまで私的見解だが、博士山は昭和村の山、と思っているので、どうにかして昭和村から登りたい。色々調べていくと、どうやら積雪期限定で登れるルートがある。博士峠から登る、あの若いころ登ったルートと、奈良布集落の黄金沢を詰めていって登っていくルートだ。どちらも魅力的だ。登ってみたくて数年前から何度か計画するが、天候や体調などでなかなか行けずにいた。
今年はもともと降雪が少なく、春先の温かさで雪の量もかなり減ってきているため、今年もダメかと諦めかけた頃、友人から、3月22日に奥会津の山に行きたいのだが、どちらか一緒に行かないか?とお誘いを受ける。私より経験もパワーもある実力者で、雪山に大事な装備も整っている人だ。博士山はどうかと提案すると、二つ返事で快諾。ようやく雪の博士山行が実現した。
当日は朝のうち快晴。気温は低く雪は固い。博士トンネルの昭和村側、除雪でできた駐車出来るスペースに車を停めて準備をする。ルートは、旧国道沿いを歩きその後尾根伝いに登り、1455mの王博士(おおばかせ)を経由して山頂を目指す。最初は登山靴のまま登るが、次第に傾斜が急になってきたため、アイゼンを装着する。堅雪にアイゼンの歯が良く効いて登りやすい。ブナの森がとても美しく青空に映える。木々の冬芽もだいぶ膨らんできて、春の芽吹きも間近だ。獣の足跡も可愛らしい。そんなこの季節ならではの自然を楽しみながら登っていく。山頂手前の王博士では、雪庇が美しく、山々の眺めは素晴らしい。しばらく見とれる。

その後は、いったん王博士を下ってから山頂を目指す。記憶は薄れているのだが、ブナの大伐採があったのは、木立が疎らなこの辺りか。鞍部を過ぎてやや急な斜面を登り、ようやくたどり着いた山頂では、360度の眺望が広がる。磐梯山、飯豊山、会越国境の山々、尾瀬方面、那須方面など、やや霞んではいるが絶景に感激する。無雪期の山頂は木々に阻まれ眺望は無いので、同じ山かと錯覚するほどだ。ちょうど枇杷首の方から登ってきた山スキーのパーティーと山頂でお会いし、写真を撮っていただく。金沢から来られたそうだ。

下山途中に王博士で昼食をとり、持ち寄ったお茶やお菓子を楽しんで、14:30予定通り下山。下山時はやや雪が柔らくなってきたが、終始アイゼンで気持ちよく歩けた。
念願が叶い、ようやく登れた残雪期の博士山、至福の7時間だった。
コースタイム:博士トンネル昭和村側入り口 7:30 王博士 10:10 山頂 11:00
トンネル入り口に下山 14:30

(『つむぎ』掲載)