第5回ヒロシマ展「骨を掘る男」上映会を終えて | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

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第5回ヒロシマ展「骨を掘る男」上映会を終えて NEW

2025.07.01

菅家 洋子(かんけようこ)
 

 前回のコラムで案内をさせていただいた、第5回ヒロシマ展「骨を掘る男」上映会は、午前・午後の部合わせて76名の方にご参加いただき、無事に終えることができた(昭和村20、栃木11、南会津9、喜多方6、金山5、坂下5、若松4、埼玉3、会津美里2、三島2、千葉2、茨城2、柳津1、いわき1、群馬1、宮城1、愛知1)。

 200席を有する昭和村公民館での上映会、まったく身の丈に合わない企画だったと思う。けれど私は、やると決めてしまった。昭和村内から会津地域、福島県内外に向けて周知活動をするなかで、たくさんの人のあたたかさに励まされながらも、落ち込んでしまうようなこともあった。上映会を終え、もっと出来ることがあったという後悔もあるけれど、それでも、最後まであきらめずにやり通せたこと、そして、当日集まってくださった方々が映画を観た後に見せてくださった表情、かけてくださった言葉を思い出すと、安堵の気持ちが湧いてくる。さらに、沖縄慰霊の日である6月23日の福島民友新聞には、上映会についての記事を掲載いただき、大変ありがたかった。

 40年以上にわたり、沖縄戦の戦没者遺骨の収集を続けている具志堅隆松さん。映画には、遺骨のかけらから体の部位を、遺骨の損傷具合から最期の状況を、ボタンの形から衣類を、金属のかけらから兵器の種類を、ひとつひとつ確かめていく具志堅さんの姿がある。遺骨を探し出し、それを家族のもとに帰すという目的のために、具志堅さんがどれだけの時間をかけて専門知識を蓄え、たくさんの汗をかき愚直に掘り続けてきたのかということが、深く伝わってくる。当日、昭和村公民館に集まってくださった方たちに向けて、具志堅さんが送ってくださったメッセージがある。ご本人に公開の許可をいただき、奥会津ミュージアムのコラムを読んでくださっているみなさんにも、お伝えしたいと思う。

【上映会参加者の皆さんへ】
映画の上映会に足を運んでくださった皆様ありがとうございます。お礼申し上げます。そして、上映会を開催して下さった菅家洋子様にもお礼申し上げます。私自身が映画を通して訴えたかったことは「戦争だけは二度と起こしてはいけない」ということです。又映画製作者である奥間監督は「人間は他人の死を悼むことは出来るか」ということを、この映画のテーマに据えていましたが、「出来る」というのが私の答えです。但し少し説明を加えないといけません。映画の中の戦没者遺骨というのは、死んだ人の遺骨というよりは殺された人の遺骨なのです。戦争で死ぬ人はいません。戦争では殺されるのです。死は全ての人に平等に訪れます。死を避けられる人はいません。人間にとって死は自然なことであり、受け入れるに値します。しかし、殺されることは絶対に受け入れてはいけません。私はすべての戦争に反対します。今この時間にもガザでは小さな子供たちが息絶えようとしています。イスラエルに殺させてはいけません。罪を犯させてはいけません。

 静謐で、まっすぐなメッセージ。上映後、会場のみなさんに向けて読み上げるとき、ガザのことに触れる言葉に涙をこらえるのが難しく、声が震えた。沖縄のことも、ガザのことも、私たちは知っている。知らないふりをして、何事もないかのようにただ通り過ぎることは出来ない。そして、沖縄やガザのことに何も言えない自分が、どうやって奥会津の山の、川の、からむしの、手仕事の、人の、やさしさや美しさを語れるというのか、どうやってそれらが大切なものだと言えるのかと、私は自分に問い続けている。
 それぞれの立場でできることが、必ずある。人が殺されたり、故郷を奪われたり、尊厳を傷つけられていることに、「おかしい」「やめて」と言わなければ、その行いは許されること、非難する必要のないことだと認めることになる。
 だからせめて、言葉を発して伝えること、書くことで、私はそれを続けていきたいと思う。