白鳥と来訪神 | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

奥会津に生きる

白鳥と来訪神 

2025.01.01

菅家 洋子(かんけようこ)

 また、会津盆地に白鳥がやって来た。私が今季はじめてその姿を目にしたのは、11月13日。わっと胸が躍り、思わず声が出る。こんなにも嬉しくて、ここまで来てくれたことをありがたいと感じる。私にとって白鳥は、来訪神のような存在かもしれないと、ふと思った。
 人の悪事を諫めたり、幸福や豊穣をもたらすために異世界からやって来る来訪神。ユネスコ無形文化遺産「来訪神:仮面・仮装の神々」には、「男鹿のナマハゲ」「宮古島のパーントゥ」など、現在10の登録がある。
 2019年の年はじめに、民族文化映像研究所(民映研)の記録映画、来訪神3部作「甑島のトシドン(鹿児島県薩摩川内市)」「八朔踊りとメンドン(鹿児島県三島村)」「ボゼの出る盆行事(鹿児島県十島村)」を観た。いったいどこから来たの…というような、奇妙で、少し不気味で、だけどどこか可笑しみもある姿に、胸がわくわくした。その得体のしれない生き物を、子どもたちは震えるほど真剣におそれる。純粋なかわいらしさに思わず笑ってしまいながら、「おそれる」とはどういうことだろうかと考える。
 子どもたちは、生活の中でしてしまった怠けや悪いことを来訪神に指摘され、咎められる。自分の知らないどこか遠くから来たこの大きな存在は、何でも知っている。嘘はつけない、ズルはできない。子どもたちは、もうしません、がんばります、と来訪神に約束をする。
 当時は、それを見て笑っていたけど、本当は笑っている場合じゃない。こういう機会が必要なのは、実は私たち大人のほうだろう。良くないと分かっていても、見ないふりをしたり、うまいこと言い訳をしたり、ずるりずるりと、何となくごまかしていることがいくつも思い浮かぶ。誰にも怒られたくないし、責められたくないけれど、同時にそれは、励ましなんだよなぁと思う。それぞれの願いや、理想に向けての。
 やってきた白鳥から、私はどんなことを受け取れるだろう。
 来訪神3部作を観たその年の晩秋、「沖縄のハジチ・台湾原住民族のタトゥー」という企画展を観に、沖縄県立博物館を訪ねた。家業である花農家の仕事がまだ残っていたけれど、企画展を開催するためのクラウドファンディングに参加していたので、どうしても足を運びたくて決行。4泊5日の日程のなか3日間博物館に通うという充実の時間をすごした。  
 当時、博物館内には「来訪神コレクション」のガチャガチャ(カプセルトイ)があり、事前にその情報を得ていた私は、絶対にやるぞ!と意気込んでいた。その時に「男鹿のナマハゲ」「宮古島のパーントゥ」「悪石島のボゼ」「薩摩硫黄島のメンドン」を手に入れたことは、私のものすごい自慢だ。

 伝わりづらい自慢だと思うけど、「えっ!メンドン持ってるの!?すごい!!」と言ってくれる人に、いつか会ってみたいと思う。