笑顔を運ぶ里神楽 | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

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笑顔を運ぶ里神楽 NEW

2024.05.15

井口 恵(いぐちめぐみ)

青木正幸さん(昭和43年生 三島町)

太鼓、笛、鐘、三味線のお囃子に合わせ、元気よく柔らかに、ふわりくねりと獅子が舞う。

神楽とは、神様に捧げる神事としてのものから、娯楽の限られていた時代に、社檀に道具や着物などを積み各地を回って楽しみを提供するものなど、その範囲はだいぶ広い。
物語も、神唄の歌詞も、舞いの振り付けも、一座の系統や伝わる土地によって様々だ。
三島太神楽保存会は、昭和50年代に芝居や神楽が好きだった町内の有志が立ち上げた団体で、三島の桐で作った大きくて軽い獅子頭と、町内の人が作ったひょっとこ面は、保存会設立当時に町民から寄付をしていただいたものを現在も大切に使っている。
現在三味線と神唄担当として三島太神楽保存会で活動をしている、青木正幸さんにお話を聞いた。

「神楽の音って、なんだか人を寄せ付けるような音楽だと思う。昔から春になると必ず春神楽が町内の各家々を門付けして歩ってたの見てたから、なんとなくおもしろそうだなぁって」
20歳の頃、神楽に興味を持った友人3人と練習を見に行き、そのまま保存会に混ぜてもらうことになった。
保存会に入ってから25年程は、ずっと獅子頭を被り踊る役を担ってきた。
「台本や教本もないし、『こぉやんだぁ』って、前に踊ってた人達の稽古も大雑把で。踊っているのを見ながら、細かいところは真似して自主トレーニングを重ねて覚えてった」

獅子舞いには「四方固め」という基本となる動きがあるようだ。
前→後→左→右と四方に足を運び、悪霊を払って四方を固めることで、邪気が入らぬようにする意味がある。
なるほど。なんとなく見ていた獅子の動きには、そのような意味があったのか!
説明を聞くと、獅子の動きの見え方が変わってくる。
「獅子頭かぶっちゃうと、顔が見えないから案外恥ずかしくないんだよね。肝心なところを抑えていれば、細かいところは多少間違っても大丈夫かなって、楽に考えて踊ってる」

獅子は、空想上の生き物だ。四つ足の動物で、ライオンが起源に近いと言われている。
そのため、獅子頭と後ろ脚は左右対称に足を出すことになる。
後ろ脚の人は、常に獅子頭の正幸さんの足の動きを見ながら反対の足を出していく。
前後の人の息が合わないと、一体の獅子の滑らかで自然な動きが出てこない。
「猫の仕草、みたいかなぁって。どうやって動くと生きているように見えるかを想像して、獅子頭の手や足の動きの微妙な表現に取り入れていったんだよ」

「なんとか続けていきたかった」
十数年前に三味線を弾いていた方が亡くなったことで神楽保存会を続けることが難しくなった時、自分が覚えていこうと正幸さんが三味線と神唄を引き受けた。
楽譜もないし、教えてくれる人もすでにいなかった。
「獅子頭をやっていた時、お囃子に踊らされていたんだよね。自分が合わせて踊っていた音の記憶を頼りに、こんな音してたかなぁって弾いてる。今も、探り探りだけど」
お囃子は指揮者がいないので、太鼓、笛、鐘そして正幸さんが担当する三味線と神唄が、お互いの調子を伺いながら、持ちつ持たれつで奏でていく。

町内でも毎年イベントに合わせて数回公演があり、どこかで出逢うことがある。
クスクス、ニヤニヤ…見ている人はみんなどこか嬉しそうに、舞台から降りてくるひょっとこに絡まれ、獅子に頭を噛んでもらう。
三島太神楽保存会のみなさまが練習を重ね、大切に守ってきてくれた地域の楽しみが、また町に笑顔を運んでくる。