【聞き書き】「三島町猟友会」会長 菅家藤一さん | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

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【聞き書き】「三島町猟友会」会長 菅家藤一さん

2024.01.01

須田雅子(すだまさこ)

2023年11月19日、三島町のゲストハウス「ソコカシコ」で、「山学」(山の生活文化を愉しみながら学ぶサークル)主催のトークイベントがあり、「狩猟文化研究所」代表で「東北芸術工科大学」名誉教授の田口洋美先生と、「三島町猟友会」会長の菅家藤一さんがお話をされた。今回は狩猟歴50年の菅家藤一さんのお話を紹介する。

鉄砲撃ちの菅家藤一さん(正面右)と「狩猟文化研究所」代表・「東北芸術工科大学」名誉教授の田口洋美先生(三島町 ゲストハウス「ソコカシコ」にて)

 私は三島町の間方で生まれ育っています。本当に山の中で、原生林が多くてクマの頭数が多いです。30代頭の頃、年配の方々が高齢で山を歩けなくなってクマ撃ち(ぶち)がいなくなったんで、「じゃあやるか」って始めました。猟師仲間がいないので巻き狩りなんてできない。クマは穴に入って冬ごもりするんだから、穴を探したら1人でも獲れるなって。
爺ちゃんが昔、猟をやっていて、「ここでクマ獲った」とか「あそこでクマ獲った」とか、小さい頃、教わっていたんで、爺ちゃんたちがクマ獲った場所は私も全部知っていました。最初は1人でやっていたんですけど、危険が伴うということで、2人とか3人で行動するようになりました。

春、ぜんまい採りとか、秋、きのこ採りとか行って、クマの穴を探していると、クマが教えてくれるんですよ。「根齧り」とか「アテ」っていうんですけど、木の幹の地面から大体30センチぐらいの所をひとっ齧りした痕がある。「この近くの穴に冬ごもりするよ」って他のクマに知らせるんだと思うんです。山の尾根とか歩くと、根齧りとかあるんですよ。「ああ、この下に穴あるな」って探すと、だいたい50メーターまで行かない近辺に穴があって、クマがいた痕跡がある。雪のないときに穴の場所を確認して覚えておくんです。穴にもぐってクマがどこに寝ていたかも調べておく。雪が降ってクマが穴に向かうと足跡が残るから、その方向の穴を探せばクマがいる確率が高い。

クマは12月の冬至前後に穴に入る。冬眠とは言うんですけど冬ごもりみたいなもの。我々が穴っちょこさ行けばもう目ぇ覚めて、熊はわかっていますから。翌年の4月、ブナの新芽が出始める頃に、オスのクマが穴から出て、メスはちょっと遅れて5月の連休頃に子グマと一緒に出てくる。約4か月間は何も食べずに穴の中で体に溜めた脂肪を消化して生きているんです。このくらいの脂を蓄えれば来年4月までもつとか、クマはバロメーターを持っていると思うんです。クマの寿命は30年と言われていますけどね。高齢のクマとかは春まで体がもたないですよ。4月まで体をもたせるために脂肪を蓄えようと危険を冒してまでも人家の近くまで来ているのが今の状況じゃないかと思います。
でもまったく餌がなければ冬眠しないクマも出てくるかもしれない。雪の浅い方さ移動してく可能性はあります。三島町全体を眺めてみますと、間方地区っていうのは、志津倉山とか博士山があってクマの頭数が多い。ところが今年は、山に木の実が全然ないために間方にクマがあんまりいないんです。宮下の辺さみんな下がってくるんですよ。だから同じ場所で何頭も獲れる。

クマは目が悪いから、立ち上がって左右に首を振って、嗅覚で人間のいる場所を探す。子グマが木に上がったら静かに黙ってバックしないと親がかかってくる。危険だから子どもをまず木に上げるわけだから。子が木に上がったら親が必ず来る。
クマと戦って人間勝てません。立ってっと必ずこうくる(顔をねらってパンチしにくる)。一番命をなくさない方法は、うつ伏せになって両腕で頭と首を守ること。腿とかは齧られたって人間死ぬことはないですから。木の陰に隠れられると一番いい。クマは動くもの見つけるのは早いけど、じーっとしていたらなかなか見つけられません。駆け足で逃げ出すとかえってクマは興奮する。急に遭遇したら後ろを向かず、クマから目を離さないでバックして、大きい木とかあったらその陰に隠れる。100%身を守れるというわけではないですが覚えておくといいです。
中にはね、震えてるクマもいるんです。クマって臆病だよ。「こらっ!なんだ!」って下からかかっていくと、くるっとまわって。それ、駆除で撃たんなんねえのかわいそうでしょ。でも、地域住民を守るためにはやむを得ない部分があります。だから何頭もクマ撃つと夢にまで出ますよ。熊の顔、もう見たくないと思ったりする。そういうわけで三島町猟友会では、毎年、西隆寺で動物供養をやっています。