【わっさな暮らし】幸せの見つけ方 | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

奥会津に生きる

【わっさな暮らし】幸せの見つけ方

2023.11.15

                                  井口 恵(いぐちめぐみ)

諏訪フヂエさん(昭和5年生 三島町)

大型商店がなく、移動手段も限られる奥会津では、食材をたくさん積んだ移動販売車が定期的に各集落を回る。
「奥の集落に行くまで、寄った先からどんどん商品は売れていくけど、奥の集落の人ほど、あれもある、これもあるって喜んでくれるんですよ」
移動販売車の店員さんと話していると、こんなことを言っていた。

「昔は米も野菜も、豆はたくさん作ってたな。肉なんてなかった。たまーに自転車で魚は売りに来てたかなぁ」
神社の祭りや、お盆になると、水鉄砲やお面や花火などをたくさん並べた“小間物屋”が現れたと、フヂエさんは懐かしそうに思い出す。
「引き出しがたくさんついた箱を肩さ掛けてしょってきた。こづかいはあんまもらえんけど、うれしくて、花の付いた髪飾り買って付けたりしたなぁ」
夏になると、自転車に荷台を乗せたアイスキャンディー屋さんも来ていたそうだ。

私が奥会津に移住してきた当時、買うところもなくて不便だろうとよく心配された。
確かにパンが食べたくても、パン屋はなかった。
しかし、移動販売に並ぶ今まであまり買わなかった製造菓子パンに感動したし、自分でパンを焼くようにもなった。
パンの代わりに、食べきれないくらいの新鮮な野菜、旬の山菜やきのこ、釣ったばかりの川魚、捌きたてのジビエ肉など、美味しいものは溢れていた。
多少手に入りにくいものはあったかもしれないが、なければないで、今手に入るものを工夫することで十分満足できた。
あれが欲しい、これが欲しいと、ないものを求めるか、今ここにあるものをいかに楽しむか。

「ここさ来て、わが見て買うのが一番いいな。買うものメモしてくんだけんじょ、見て欲しくなるとつい余計に買うこともあんなぁ」
移動販売車の周りを何度も何度もぐるぐる回りながら、ゆっくりじっくり買い物を楽しむ。
「家の前まで来てくれて、助かる。頼んだものは届けてくれるし、ありがたいなぁ」

今は欲しいものがなければネットで注文もできるし、大抵のものは探せば見つかるし手に入る。
同時に、溢れた情報やモノの中から、常に「選んで」いかなければならない。
近場で大体のものは手に入る都心での生活では、次から次に提供される新しい情報と流行に追いかけられて、時々溺れそうになっていた。
たくさんの選択肢を知れば知るほど、あれがない、これがないと、もっともっとと求めることで、わがままにもなるし、ないことに不満も溜まっていたりした。
なんでもある都心部で、欲しいものや選ぶことに疲れていた自分がいた。

「細かく切った紫蘇っぱ(紫蘇葉)とむぎっこ(小麦粉)を混ぜて、油でうすーく揚げるの。昔食べたのがうまいなぁって思い出して、近頃食べたくなって2回も作ってみた」
フヂエさんに食べたいものを聞くと、嬉しそうに作り方を教えてくれた。
昔食べられなかったものでも、今なかなか食べられないものでもない。
昔から食べてきた、好物の懐かしいもの。
「欲しいなんてものは、あんまねぇなぁ。デイサービス行くと大勢いるから、あんなん着てんのいいなぁと思うことある。なんぼ歳とってもそういう気持ちはあるなぁ」
定期的に通うデイサービスで習った折り紙や手芸を、作り方を思い出しながら家でも熱中して作る。
窓際にはたくさんの作品が吊るされていた。
「こめら(子供たち)は毎週来てくれるし、畑に、折り紙に、やることもあるし、食べたいものも食べられる。ひとりでも、十分幸せでいる」

あれもある、これもある。
フヂエさんは、幸せ探しの達人だ。