渡部 和(わたなべかず)
あるとき、ダンボールを使った織物のワークショップの機会をいただいた。これは以前、療養のために滞在した場所で始めたことだ。手仕事が好きなら、みんなが楽しめるものづくりをやってみては、と提案されて考えたのが、「ダンボール織」。スーパーに積まれているダンボールをもらってきて板状に切り、上下に等間隔に切り込みを入れて糸を巻く。そこに毛糸や裂いた布などを織りこんで、コースターや小さな袋を作る。身近な材料で誰でも作れる簡単なものだが、やってみると思った以上に夢中になる。
公民館の老人学級や子どもたちの課外授業、また学童などの指導員の研修会など、あちこちで体験する機会をいただいたが、どこでも楽しんでもらえたようで手応えがあった。子どもたちには箱ごと使って作るネックウォーマーも人気で、回を重ねるにつれ材料や道具も工夫するようになった。
昭和村のからむしもそうだが、伝統的な手仕事には知識や技術が必須だ。けれど一方で、特別な技術がなくても、身近なもので楽しめる世界があってもいい。そう思えるようになって、私はずいぶん楽になったと思う。
特に子どもたちとワークショップをすると、いくつも発見があり教えられる。たいていの大人は曲がったり間違えたところを気にしてやり直すが、小さい子どもたちはどんどん先へ進む。彼らには「間違い」という概念がないように見える。人が何を思うかなど気にせず、好きなように手を動かして満足して見せに来る。そしてほとんどの子どもたちが、家族の誰かにプレゼントする。
私がしたかったことはこれだった、と夢中になっている子どもたちを見ながら思う。ダンボール織を通じて、私自身も自分らしさを見つけられたように感じる。一人で作る時間も大切だが、自分のもっているものを差し出し、受けとってもらえる喜びは格別だった。
これからも、子どもたちにものづくりや表現することの楽しさ、分かち合う喜びを伝えられたら、それは一人で創作する以上に、心が満たされることかもしれない。