長島 雄一(ながしまゆういち)
2022年8月には、同町細越地区に所在する池ノ尻遺跡から、鏡合わせの様に向かい合う一対の土偶状の装飾が付いた「人体像把手付土器(じんたいぞうとってつきどき)」(土偶付土器)が、偶然にもやないづ縄文館内で発見され、マスコミで報道されたことから全国的にも大きな話題となりました。人体表現に優れた、このような大型土器の類例は少なく、その用途については現在、検討を加えているところです。この土器は国・県の補助を受けて、奈良市の元興寺文化財研究所で本格的な復元・修復作業が行われました。今年、一般公開する予定です。
また昨年7~11月に開催された「奥会津の縄文」展では、遺物を収蔵している様子も合わせて展示する「収蔵展示」の手法を用いて展示に臨み、「発掘後の流れと最終的な収蔵の姿がよくわかった」などの評価を得ました。
期間中、奥会津7町村には合計で約15000人、やないづ縄文館だけでも九州・四国をはじめ全国から約3000人の方々が訪れ、柳津の縄文文化を驚きの目をもって見学してくださいました。愛媛県のある方は期間中、遠路2回も足を運んでくださいました。多くの方々の来場は柳津町にとって、また奥会津にとって本当にありがたいことでした。研究者はもちろん、縄文ファンや一般の方々の関心も高かったと実感していますし、縄文が持つ様々な魅力と奥深さが現代人を惹きつけ、知的好奇心を刺激したことが背景にあったのではないかと考えています。
そして昨年12月12日、文化庁の調査官が石生前遺跡の現地を視察し、合わせて出土遺物もじっくりと観察されました。その結果、石生前遺跡の出土遺物は非常に高い価値を有する文化財である、との見解をいただきました。従来の成果に加え、一昨年からの整理作業によって、石生前遺跡の価値の「見える化」が図られ、その成果が展示によって広く公開・発信されたこと、池ノ尻遺跡の土器などの新発見資料の登場によって「柳津の縄文文化」は改めて高い評価を受けたのです。
今後もさらなる価値の底上げを図り、町の未来を見据えて、人的・物的な体制整備と町内外へのPRを積極的に行っていく必要があります。
「縄文は柳津の宝である」・・大切にしているものがあります。一昨年の秋にお会いした地元のおばあさんの言葉です。
「これだけの宝物、(柳津)町は持ってんだがらな、もったいねえな、これ活かさねえ手はねえよな。」まさにおっしゃるとおり・・心に響き、励まされた一言でした。
文化財を守り、地域の宝として活用していく。そうした基本的なことを再認識し、前に進みたいと思います。