長崎 キヨ子(ながさききよこ)
「アニマシオン」の「アニマ」とは、ラテン語で魂・心を意味します。アニマシオンといは、その魂・心が生き生き・わくわくと躍動することで、英語のアニメーション(animation)と同義語なのです。
知的好奇心を刺激し、自ら何かをしたいという気持ちを呼び起こす「きっかけ」となるもの、心を励まし、揺り動かすために行われる、あらゆる取り組みを、フランスやスペインでは「アニマシオン」と呼んでいるようです。
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「読書へのアニマシオン」は、本来「人生を豊かに生きること」を励ますアニマシオンを読書教育にも適用し、本の世界や図書館に誘う多様な活動です。
日本で「読書へのアニマシオン」として注目されるようになったのは、スペインの児童文化ジャーナリストのモンセラット・サルトによる『読書で遊ぼうアニマシオン∼本が好きになる25のゲーム』によります。モンセラットは「子どもが読む力をつけるのには教育を必要とする。『読め』と言うだけでは、子どもは本を読むようにはならないのです。」と述べて、「良い読み手になるための励ましや方向付け」をアニマシオンで開発しようとしました。
その特徴としてモンセラットは、「遊びの力を借りました。」と述べています。クイズやゲームで遊びながら、子どもの興味や関心を引きだす手法です。「大人の読み方を押し付けるのではなく、子どもの読む力を引きだそう」という信念のもと、どんな子供でも読書を楽しめるようになるための75の方法(作戦)を開発しました。
日本では、2018年度の文部科学省「第四次子供の読書運動における、子供の読書への関心を高める活動」の箇所に、「アニマシオン」が登場しました。
それでは「読書へのアニマシオン」実施とはどのような形をとるものなのでしょうか。
それは、「子どもがグループで同じ本を読み、大人の指導者の下で本を使った遊びを行いながら、知らずしらず読解力を育てる」というものです。年齢的には、文字を全く読めない3~4歳の幼児から18歳くらいの教育のもとにある時期に、継続的に計画的に実施されるものとして考案されています。
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先月、『読書教育としてのアニマシオン~子どもの「読みたい」を支援する~』という学習会があり、参加してきました。講師は本宮市立しらさわ夢図書館の柳沼志津子館長。
アニマシオンについての話から、この指導は本来、専門職の仕事であることや、作戦の選定の大切さ、選書について、ポイントなどの説明を受けた後、12名の参加者で実践しました。使用する2冊の本は事前に全参加者の手元に届いていて、読んでから参加することが条件です。
●『時計つくりのジョニー』エドワード・アーディゾーニ作 あべきみこ訳 こぐま社
作戦7で、登場人物は「どんな人か」を、くじ引きで決まった2人1組で登場人物のイメージを本の中から読み取って発表します。相談しながら、この人はどんな服装をし、性格や行動はどうしているかなどを記入していきます。その後、全参加者の前で発表しました。
●『すばらしい季節』:ターシャ・チューダー作 末森千枝子訳 現代企画室
作戦30「なんてたくさんのものがあるのでしょう」では、本の中に出てくる五感で感じる春夏秋冬をまとめていきます。作者が絵で表したもの、文に書いたものの中から、それぞれの発言をもとに表を埋めていきます。最後に、参加者が感じる季節のものを抽出し、表に加えていきました。
2冊とも絵本でしたが、実際に自分が参加してみて、文はしっかり読んでいましたが、絵はよく見たつもりでも見ていなかったことを反省することになりました。
本は読むだけでなく、こんな楽しみ方があったという驚き、今までに体験したことのない世界に触れました。チームの人たちと答えを導き出す楽しさや、自分の意見を受け入れてもらえるうれしさも味わうことが出来ました。
このようなアニマシオンを、しらさわ夢図書館では、今年度、保育所・幼稚園・小学校で合計112回実施計画しているそうです。アニマシオンは継続していくことで効果が生まれます。そのため、多いところでは年間8回も行っているそうです。
子どもたちが本を読まなくなったと言われてだいぶ時が過ぎました。なぜ子どもたちは本を読まなくなったのでしょうか。テレビやインターネット、ゲームなどのせいでしょうか。本当の原因は、大人や教師が子どもたちに本を読ませたいとする努力を怠っているからだと考えています。そもそも大人自身が本を読まなくなっているのです。本を読まない大人が、本を読めと言っても説得力はありません。
本と子どもを結びつけるには、身近な人のマン・パワーが必要です。しらさわ夢図書館のような取り組みを、どこでも実施していけるようにするのが、私たち大人が、子どもたちへの責任として認識する必要があるのでしょう。また、大人もスマホから手を放し、本を手にして読書する姿を子どもたちに見せていくことが、子どもたちへ読書の楽しさを伝える大切なことと感じています。