妄想の縄文展 三島町 | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

奥会津文化施設間連携企画

妄想の縄文展 三島町

2023.09.08

奥会津は縄文を色濃く残す、全国でも稀有な場所だという。しかもそれは、大昔にぽつんとあった遺跡の孤立した片りんなどではなく、今に脈々と続く文化であり伝統であり、そして、わたしたちのDNAでもあるらしい。
奥会津各所の文化施設で、7月から連携企画展が同時開催されている。それぞれの展示が語るものは、遥かなる縄文と奥会津のいま・こことの繋がり。そのひとつひとつが、縄文の声を、暮らしを、圧倒的な熱量をもって(わたしの妄想に)訴えかけてくる。

【三島町交流センター「山びこ」】

「あれ、ふたつみっつ とばしっちまった」
「さすけね、だいたいでいいだ」

交流センター山びこの、静寂な展示場の壁に沿って、三島町8か所の遺跡から発掘された縄文の品々が並べられていた。およそ5500年前の縄文中期以降のものだという。年代を追って、几帳面に、きっちりと並ばされているのに、土偶やら鏃(やじり)やら土笛やら耳飾りやら、押し合いへし合い、饒舌に語りかけてくる。わいわいがやがや、どれもみな明るい。縄文は自由だ。

目を惹くのは、編み籠や巻紐、土器の底にくっきりと編組の圧痕という展示の数々。植物を編むこと、綯(な)うことは、縄文の暮らしの一部であったと物語る。それはつまり、山ブドウやマタタビ、ヒロロなど山の植物を編む技で、今や全国的に有名な「てわっさの里、三島」の原点が、紛れもなく、ここにあることの証だ。

そのてわっさのご先祖たちは、きっと実におおらかだったにちがいない。展示のひとつ、未完成の編み籠(複製)は、ずいぶんとラフに編まれていて、説明文では「胴部を見る限りでは規則性が見られず」とばっさり。確かに、あちこちと目が飛んではいる。見れば見るほど、まるで自分が作ったようで、もはや親近感しかない。
これはきっと、堅穴の家の炉端で、孫娘がばっちゃから教わりながら、初めて編んだのだ。うまくできないと泣きべそをかく孫娘に、ばっちゃは優しくいったはずだ。
「さすけね、だいたいでいいだ。じっきうまくなっから。栗、焼いて食うべな」
縄文は、奥会津に暮らすわたしたちの、すぐそばにある。

菊地 悦子(きくちえつこ)