菅家 博昭(かんけひろあき)
<文献資料編1>
喜多方市塩川町の芳賀英一さんには、『奥会津の縄文』でたいへんお世話になった。今回の『奥会津の川』の事前調査等でも同様であった。
2025年1月11日(土)午前、塩川の芳賀さん宅訪問。前夜1月10日、電子メールで奥会津の川漁に関する研究ノート2214文字が送付される。史料に基づく濃い内容である。
【只見川の鱒、阿賀野川の鮭(芳賀氏栄一氏記述より転載)】
江戸、明治期の会津の鮭の漁場は西会津から塩川の阿賀川、会津川(日橋川)。新編会津風土記の耶麻郡慶徳組の条に山崎付近で「ゆくり舟」による鮭漁の記述。新潟県三面川の鮭漁と似た漁法で注意。
下流で捕獲のため、上流域で鮭漁が発達しなかったか。只見川流域の会津坂下町片門に州走(すばしり)という集落がある。鈴木牧之の北越雪譜に「さけのすばしり」というのがある。州走は古川利意先生のところ。昭和49年初めてお会いした際に、お住いが州走ということで、鮭のすばしりに関係するかとたずねたことがあり、東京にもどり北越石譜を複写して古川先生に郵送したことがある。州走付近の只見川は舟渡の舟橋があったように、浅瀬が続いていて鮭が瀬を走る「すばしり」がみえても不思議ではない。この何年かあと、中村五郎さんが会津坂下町史文化編で鮭のすばしりと州走の関係について詳細している。
鱒はサクラマスのことで、会津各地に「藤の花が咲くころマスがのぼってくる」という話がある。滝谷川流域の湯八木沢集落の一番上流に大きな淵がある。三十年ほど前に上新田にあった発電所に関する調査をしていた時に、八十代の村の老人から昭和の初めてころ、藤の花が咲くころマスがのぼってきて、この淵についた。村の若者が口にヤスを咥えて素潜りしマスをついた。自分も子供の時に父親が素っ裸でこの淵に素潜りしマスをついた。川原岸で父親があがってくるのを待っていたが、なかなか姿をみせず不安になった。そして姿が見えるとヤスには大きなマスが刺さっており、その光景は今でも忘れられない。発電所のダムができてマスの姿が見られなくなり寂しい、という話を聞いた。
只見川流域の人々にとってサクラマスは特別な存在であったろう。鮭鱒について多く論じられているが、身近な存在はハヤ(アカハラ)、カジカ、フナであろう。それぞれどのような料理、保存方法があったか。
ハヤは初夏の産卵期にマセバを設けて投網でとる。四十年ほど前、義父の部下であった銀行の川口支店長と金山で焼いたアカハラを買ってたべたが、玉梨か八町あたりであったか。その点で桧原の梁場は興味深い。玉梨には魚梁場(やなば)という小字がある。小字に魚が関係するのは奥会津では、これと舘岩の湯の花の「鱒沢」くらいであるが、大桃の鱒滝のように通称、俗称の名前が各所にあるであろう。
アーネスト・サトウの記述は是非触れたほうがいい。次男が植物学者・北大・京大教授、日本山岳会会長の武田久吉。「尾瀬紀行」を著し平野長蔵と尾瀬の保護に尽力し、奥会津では忘れることができない人物。
後日談、アーネスト・サトウは実際には会津を歩いていない。関係者の情報を元に書かれていることがわかっている。
<文献資料編2>
【資料1】

「会津名物類聚」 江戸末 沢龍堂蔵版(芳賀所蔵)添付画像
番付形式に会津領内の産物を記載
東前頭 揚川鮭(サケ)
西前頭 湖水鮒(フナ)
西前頭 原川鮠(ハヤ)※
西前頭 只見川鱒(マス)
※原川は会津若松市湊町の猪苗代湖西岸にあり、布引山付近を源流として、崎川浜南端で猪苗代湖に注ぐ。
【資料2】
福島県歴史資料館寄託「檜枝岐村文書」
1454「明治七年分物産調書控」
若松県令沢簡徳宛
魚類 干岩那(ホシイワナ) 600連 金25円
※同年 熊 10頭 金200円
1456「明治8年分物産取調書控」
魚類 干岩那 800連
鱒 200本
鮒
※明治初期に檜枝岐から干したイワナが出荷されている。鮒にも注意
【資料3】
福島県庁文書より

河沼郡、耶麻郡に鮭の漁場の記録あり。メールでは南会津郡の一部を抜粋。
【資料4】
福島県歴史資料館寄託「河越卿家文書」
1385「梁場取調上申」写 明治14年 一紙文書
戸長から福島県知事
・桧原村川原地内の只見川に7月から11月までの期間鮎・ウグイ捕獲の梁場設置について上申
※小和瀬遺跡付近の梁場の存在
【資料5】
アーネスト・サトウの尾瀬、檜枝岐、伊南村の漁撈の記録
「中央部・北部日本旅行案内」明治14年 (英文)
「日本旅行日記」庄田元男訳1992全2巻 平凡社東洋文庫
「明治日本旅行案内 上・中・下」庄田元男訳1996 平凡社
「アーネスト・サトウの明治日本山岳記」庄田元男訳2017講談社
(内容)日光から金精峠・尾瀬・八十里越を経て新潟へ。
大桃上流の鱒滝 6月後半から7月にかけて産卵で遡上する鱒を滝に太い繩をわたし籠を吊るして籠に入った鱒を捕獲。捕った鱒は大桃の二十戸の家に順番に分配される。
只見長浜付近で川が増水した時に網でカジカを捕獲。カジカは乾燥させて食用。
尾瀬沼にはイワナ、鮒、ハヤが棲息。