【奥会津探訪】 東北と沖縄に苧麻がある | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

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【奥会津探訪】 東北と沖縄に苧麻がある 

2023.09.15

須田 雅子(すだまさこ)

新垣幸子先生と八重山上布

2014年12月、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学) 通信教育部のスクーリング科目「地域芸術遺産研究」を受講するため、沖縄県の石垣島に向かった。久高島のお月見会でご一緒した染色作家の平井真人先生の案内で、八重山の石垣島、西表島、竹富島を3日間でめぐる旅だ。染織や陶芸の工房を訪ねたり、祭祀を見学したり、島で暮らす人たちから歴史や文化の話を聴いたりと、非常に内容の濃い授業だった。知らない土地が少しずつ知っている土地になっていくのは嬉しい。

石垣島では八重山上布の作家の新垣幸子先生の工房を訪ねた。上布の原料となる苧麻(ちょま)が、工房の外に植えられているのを窓越しに見る。新垣先生が絣模様の入った八重山上布のサンプルをいろいろと見せてくださる。薄く繊細な織物だ。同じ苧麻を原料としていても、私が昭和村で見た「からむし織」は、生成りの素朴な布で質感がまったく違っていた。

「からむし織」(イメージ)
山内えり子さんの地機織りの布

その頃、私は岡本太郎の著書などを好んで読んでいたのだが、彼は東北と沖縄に縄文的なものを感じている。

東北に行くと縄文の時代を非常に直感的なんだが身にしみて感じるのだなあ。西の方に行くと弥生式で、沖縄に行くと今度は逆に縄文に近いものを感じさせる。
岡本太郎・泉靖一著 『日本人は爆発しなければならない―日本列島文化論― 岡本太郎・泉靖一対話<復刻増補>』アム・プロモーション2006年第3刷P.130

そして、小説家の島尾敏雄もこんなことを言っている。

東北と琉球弧は、対蹠的な場所に位置し、似通った具体が多いというわけでもないのに、あらわれた生活の肌合いに、ある了解の成り立つ共通のなにかが感じられるのも、私の内部にはたらくへんな誘いだ。たぶんわれわれは日本それ自体についても多くの未開墾の分野を持っていて、東北と琉球弧のそれが、われわれに何かを語りかけてくるのかもしれないとしかいいようがない。
島尾敏雄著『新編・琉球弧の視点から』朝日新聞社 1992年 P.248

島尾敏雄が「肌合い」という言葉を使っているが、岡本太郎も『沖縄文化論―忘れられた日本』の中で、「肌」という言葉をよく使う。「肌ざわり」「肌理(きめ)」「肌あい」「素肌」…。

東北の山奥と沖縄の離島に、苧麻という草を原料として機織りをする文化が残されている。東北と沖縄に共通するものってどんなものだろう。苧麻を切り口に、それを肌で感じとることはできるだろうか。大学の卒論のテーマがようやく見えてきた。