【奥会津探訪】癒しの里山サイクリング | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

奥会津に生きる

【奥会津探訪】癒しの里山サイクリング 

2023.07.01

須田 雅子(すだまさこ)

(写真提供:南会津サポートクラブ)

 私の奥会津との最初の出会いは、2007年4月の里山サイクリングだ。南会津が大好きで二地域居住を経て、後に南会津町の住民となった野田雅之さんを中心に、南会津・奥会津好きの自転車仲間たちがガイドとなり、各地の見どころを案内してくれた。

 東京にいた頃、私は自然豊かな田舎に癒しを求めて、しばしば一人旅に出かけた。ママチャリをレンタルして走っていると、見知らぬ土地さえ、不思議と身近に感じられる。車で通過するのでは速すぎる。歩きでは見られる範囲が限られる。「自転車で田舎を走るのがいいな」と思って、ネットで旅先を探していたら、南会津(および奥会津)の里山を自転車で巡る一泊二日のツアーを見つけた。集合場所の会津田島駅に浅草駅から快速で一本で行けるというのもよかった(※)。
(※)特急「リバティ」新設後、浅草発着の直通快速は廃止に。

 最初に参加したのはお花見サイクリングだ。東京より数週間遅く、ゴールデンウィークの頃に桜が楽しめる奥会津。のどかな農村風景の中、春風をきって自転車で駆け抜ける。空が広い。川の水は澄んでいる。桜の下で食べるお弁当がおいしい。いやいや、何より空気がおいしい!

 その後もたびたび奥会津を巡るサイクリングに参加し、南会津町の他にも、只見町、金山町、昭和村あたりを走った。山々の新緑は生気に溢れ、もりもりと膨らんでいる。紅葉の山道も夢のようだった。自然の湧き水で喉の渇きを癒すなんて、首都圏の新興住宅地育ちの私には初めての経験。ワタスゲの花咲く駒止湿原やヒメサユリの群生地、「恵みの森」などにも行った。

南会津町と昭和村にまたがる駒止湿原
恵みの森(只見町布沢)

 宿での夕食前に温泉に浸かってじわ~っとあったまる。昔ながらのひなびた温泉から今どきの温泉まで、泉質が場所によって違うのも良い。サイクリングで体を動かした後は、郷土料理や地酒に舌鼓を打つ。ああ、癒しの奥会津。

 ツアーで知り合った人たちに誘われ、あちこちのサイクリングに参加するようになった。2008年、自転車仲間に連れられて、会津田島駅から舟鼻峠の旧道を越え、只見町までの約75キロを走った。途中、昭和村で「道の駅からむし織の里しょうわ」に立ち寄ったら、素朴なわりにやけに高価な織物がある。お土産に気軽に買える価格を優に超えている。店員さんに聞くと、「これは“からむし織”といって、からむしという草から糸を作って機織りすんだ」と言う。村にやってきた織姫さんたちが、そのやり方を学んでいるのだと教えてくれた。

 虫?草?草から糸!?糸といえば既製品しか頭になかった私は、糸が糸になる前のことなど微塵も考えたことがなかった。意味がわからないまま、目的地の只見町に向けて、自転車のペダルを漕ぎ出す。頭には「?」がちらついていた。

<人物紹介 野田雅之さん>

(写真提供:南会津サポートクラブ)

南会津サポートクラブ代表。鉄道会社とコラボした「東京・南会津サイクルトレイン」など南会津・奥会津の里山サイクリングツアーを企画・運営してきた。現在は、「南会津サイクルツーリズム協議会」や「NPO法人森林野会(もりのかい)」の「じね~んの森」(南会津町高野)の活動にも取り組んでいる。