【奥会津探訪】 観世流シテ方 津村禮次郎師 | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

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【奥会津探訪】 観世流シテ方 津村禮次郎師 

2023.06.15

須田 雅子(すだまさこ)

 能面作家、浅見晃司さんの作品展『~日本の仮面譜~ 百花斉放』(三島町交流センター山びこ)の開催初日(2023年5月3日)に行われたギャラリートークに、観世流シテ方の津村禮次郎師(能楽総合の重要無形文化財保持者)が特別出演された。津村師は浅見さんの能楽の師で、遠路はるばる東京からお見えになった。津村師のお話の中から能面について紹介する。

能楽の弟子、浅見晃司さんの
能面作品について語る津村禮次郎師

 能面というのは一つの美術品ではありますけれど、私たちは、舞台での能の表現の道具として、顔にあてて演じるわけです。面と書いて「おもて」といいます。
能のおもては表現の一番中心になる道具なのです。動いたりするわけじゃないから、光をどう使うか。光との関係性が大切ですね。強い照明をあててしまうとおもての表情が出ない。やわらかい自然光の中で使います。

 能の中で、翁というのは神様の現身(うつしみ)です。能ではもっとも神聖な祈りの曲が「翁」なのですね。正月に天下泰平、五穀豊穣をご祈祷する能が「翁」です。

 それから能では女の曲が多い。女性ってね、表現してて面白いんですね。同じ若い女でも、源師物語の貴族の女と遊女では使うおもてが違います。気品のあるもの、ほわっとしてやさしい感じがするもの、クールなもの。髪の毛のラインも、すらーっと描かれていたり、波打っていたり。それから目の周りの彫りですね。彫りが深いと面を伏せたときに影ができる。能面師が曲に合わせて工夫しているので、一つだけ見ているとわからないかもしれませんが、比べてみると全然違う。演者は能の中のキャラクターや精神性によって、おもてを選ぶわけです。おもてによって着る衣装、装束も若作りにしたり、知的な感じにしたりします。

 般若は嫉妬に狂った女。女性が恋焦がれて鬼になる。角は実は内面の怒りを象徴しています。抑えていたものが突き破って出てくる。男に裏切られて角が出かかっているものもあります。内面の強さによっておもてを使い分けていくのですね。

浅見晃司さんの笛で舞を披露する津村禮次郎師

 ギャラリートークの後、浅見さんの笛で、津村師が「安宅」の舞を披露してくださった。おもてをつけない直面(ひためん)の弁慶だ。81歳という年齢を感じさせない、気迫とキレのある見事な声、そして舞であった。

 恩師の舞の切れ味に桁違いの凄さを感じたという浅見さんが、感極まった様子で語った。

 「津村先生はこれだけ古典を大事にしながら、芸能というか古典というものの未来をいつも気にしておられて、いろんなジャンルの方とコラボレーションをして世界各国を飛び歩いておられます。伝統って止まらないんですね。一歩も。私も鄙(ひな)にありながら、自分に鞭打ってこれだけ作品ができたっていうのも、津村先生に教えていただいた能楽の魂と、面打ちの師である橋岡一路先生にいただいたスピリッツだと思っております。周りの方々に支えていただいたことにも感謝に堪えません。本日は師匠に花を添えていただいて、本当にかけがえのない会になりました」。

【Information】
浅見晃司さんの作品展『~日本の仮面譜~ 百花斉放』は、2023年5月3日(水)~6月25日(日)まで「三島町交流センター山びこ」で開催。