菅家 博昭(かんけひろあき)
南会津郡 檜枝岐村

檜枝岐村では、魚類の呼称の細分化が行われている。
「村では岩魚は大きさごとに名前があり、くぎどこ(10センチ以下)、とこ、いよ(18センチ以上)と呼び名が変わります」(『商工会女性部30周年記念誌 食の菜四季 檜枝岐』(2009年)31ページ))
イワナ、カジカを大きさにより4段階ほどに分類している。しかしそれらはあまり文献に記載されていない。
●平野千代一さん→長一さんの情報としてカジカ・イワナの大きさ別呼称
<カジカ>
メッカッチー イワナと同じで1cm以下位、メッカ1寸 約3cm以下、ヒアガリ約5cm、
カブレ12cm以上で頭が大きいカジカのこと。特に大きい頭のはウーッカブレ
<イワナ>
ヌカボコ(孵化したばかり)、クギドコ約1寸、トコ3寸以上、イヨは6寸以上
今回、檜枝岐村の案内は、昭和村大芦の須田雅子さん。檜枝岐村の皆さんに聞いた話を聞いた順に記します。
(13)平野千代一さん(昭和23年生)
冒頭から「とにかく川で育ったようなもんだ」と語る。夏休み以外にも、川のようなところで遊んだという。2階の部屋で、薪ストーブを囲んで話を聞いた。
「春は水が多かった。川のなかの田んぼみたいなところには、子どものころ遠く上流から川の流れを利用して材木を運んできて、加工した材木も、田んぼのような水たまりに入っていた 。それによく乗って遊んだ。中学終わるころまで遊んだ。
板に挽いて乾かすと堅くなるから、水に入れて材料を保管していた。
檜枝岐川ではいちばん深いといわれた「カワクボブチ(川窪淵)」にも飛び込んで遊んだ。学校にプールが出来ても、中学生になると「マガメ」で遊んだ。寒くなると「腹暖め」をした。大きな石を抱くように腹を暖かい石につける。特に黒い色の石が暖かかった。学校から帰ると、トウモロコシを食べながら水遊び。
「カワクボブチ」の下で水遊びしていた妹が流された。大人が飛び込んで助けてくれた。
サカナ獲りは、3月20日が解禁日だったので中学生になると友だちと出かけた。舟岐川の奥にイワナ釣りに行った。エサは川虫。夏は川にもぐってヤスで突く。放流したニジマスなども釣れた。
尾瀬の山小屋でアルバイトをした。その小屋のじいちゃんは毎日サカナ釣りして泊まった人に焼いて出していた。今は釣ってはいけないけれど。そのころ釣りで尾瀬に入った与三郎さんは、まだ釣りをしていた。親戚になっている。竜宮から下にはイワナがいた。
七入まで自転車で行って、フナやドジョウを網ですくって獲った。フナは食べないけれども…。サンショウウオも、カワネズミもいた。
イワナ獲りではビク(魚籠)いっぱいになった。30匹ほど入る。イワナは火であぶって干した。父はビク作りもしていた。それでもサカナは必要以上には獲らなかった。なぜって?いつでも獲れるから。たくさんサカナを獲っていく人たちは地元の人じゃない。どこかに売っている。
祖父は干しイワナは旅館に売っていた。駒ヶ岳の向こう側まで泊まり込みでイワナ獲りにいってそこで干して持ち帰った。連という単位は、重さじゃないだろうか?
中学を終えると出稼ぎで神奈川県に出た。大工として10年ほど工務店に勤めた後、檜枝岐に帰ってきた。母が蕎麦切り(蕎麦打ち)ができたので柳屋という民宿をはじめた。また鉄砲撃ちもして動物の皮も売った。狩りは、やっててよかったと思っている。爺さんも、おじさんもやっていたから。ウサギやヤマドリは当時はいくらでもいたから。クマは秋には獲らない、春に獲る。
雪崩、表層雪崩は、危ないところに出なければ事故にはならない。天気を読み、今日はだめだなという日は出かけない。昔は雪は多かった。
サンショウウオ漁も、おじさんが止めたのでそれを引き受けた。沢ごとに獲る人の分担があるので、勝手にはじめることはできない。肉食のサンショウウオは沢が針葉樹になっている沢でないと生息できない。
マス獲りは、昔話には聞いている。マスヤスはあった。刃にカエシが付いている。
イワナの大きいものは塩漬けで保存したから、マスもそうしたんだろうけど、生でも喰ったと思う。
カジカはじゃまになるほどいる。獲っては焼いてよく喰った。しかけで獲っているじいちゃんがいた。ズウと呼ぶ大きなわなは、中にサカナが入ると出られないようにカエシが付いている。口を下向きに仕掛ける。大きなイワナも入る。川から上げられないほど入ったこともある。毎年同じ場所に掛けるので、よく役場の下の川には見に行った。
台風でオオミズが出ると「ニゴスクイ」でたくさんサカナが獲れたが、大人しかやることができなかった。川に流される危険性があるから。
水メガネは、ヨモギで洗うときれいになり曇らない。
イワナの肉で「イヨ味噌」を作った。良く焼いて、骨をはずして、皮ごと包丁で刻んで、味噌に合わせるが、春の野に出たノビルを入れる。調味料はできるだけ少なくし、固めに作る。春にとったイワナは、よい香りがあり、その香りをいただく。
焼いたイワナの肉で炊き込みご飯にもするのは、昔からあった。
干しイヨ(イワナ)は、蕎麦の出汁にした。お祝い事にはお椀にイヨ一匹ずつのせた。