長崎 キヨ子(ながさききよこ)
私の住む小学校学区内に、昨年ふたつの私設図書館が開館しました。5月開館の絵本文庫「やまぼうし」と、7月開館のまちライブラリー「ひのき図書館」です。私は、このふたつの図書館に開館前から関わってきました。
「やまぼうし」は、蔵書の6000冊すべてが絵本という、住宅地の中にある小さな図書館です。昨年3月までの20年間、市の中心部で同名の文庫で活動してきた一代目の意思を繋ぎ、その蔵書を丸ごと引き継ぐために、自宅のガレージを改修し、一代目に負けず劣らずの図書館を作ってくれたのは私の友人です。一代目の館主も私の友人で、私は、この時の開館時にも書架のデザインや運営方法を決めたり、開館日にはスタッフとしても関わってきました。
この間、子ども会がなくなり、文庫の前を通る子どもたちの姿も消え、利用者も減少していきました。20年間続けるという館主の目標達成が近づいた時期に、丸ごと引き受けると手を挙げてくれたのが現館主で、先代とは二世代くらい年齢の差があり、これで今後20年くらいは継続が可能だと、それまで長く関わってきたスタッフ一同、安堵しました。
やまぼうしは、貸出冊数制限も返却期限もない、おしゃべり大歓迎の図書館です。公共図書館ではできないことも、ほかの人の迷惑にならなければOKの緩さで、軽い飲食もでき、時々大人のコーヒータイムやおしゃべりの楽しい場になったりしています。 子どもたちも歌を歌ったり、ブロックや折り紙で遊んだりと、思い思いに過ごしています。
ただし、移転開館1年が過ぎ、7月からは開館日、時間の変更をすることになりました。それまで火、木曜日の午後3時30分から5時30分、土曜日の午前9時から12時の開館でした。小学校が近いので、学校帰りの子どもたちの利用を期待しての時間設定です。しかし、子どもたちは忙しいのか、下校時の寄り道が禁止されているのか、小学生の姿はほとんど見られません。土曜日も親に連れられた幼児の利用が中心です。
それに比べて多かったのが、大人たちの利用で、交流の場としての役割も大きいと感じています。以上のことから、平日の時間を水曜日の午後1時30分から4時30分に変更することにしました。
最近の公共図書館などのおはなし会の参加者も、低年齢化していると言われています。子どもたちの生活が大きく変化し、おはなし会や本を楽しむ時間がたっぷりと持てなくなっているという悲しい現実があります。私たちも、このことを重要視しながら文庫運営をしていく必要性を強く感じています。
「ひのき図書館」は、調剤薬局が設置している、全国的にも珍しい「まちライブラリー」です。
まちライブラリーとは、2011年、磯井純充さんが実施、提唱し、全国に広がった私設図書館です。2023年3月現在で、まちカフェ、お寺、病院、自宅、商業施設など多様な場所に展開し、1000か所以上に広がっています。
本を所蔵していなくても、本を持ち寄り、お互いに閲覧し、貸し出しなどを通して、人とつながることを目的としています。
薬局内にあるひのき図書館もそのひとつで、厳格な規則などはなく、軽食やゲーム機の持ち込みもOKの緩やかな運営です。木造二階建ての一階の一部と二階が図書館になっていて、素足で歩くと気持ちのいい木の床には、木製の机や椅子が置かれ、畳コーナーもあり、赤ちゃん連れにも安心の居心地の良い場所になっています。本からはじまる人と人のつながりを大切にして運営していくという薬局の想いが伝わってきます。
3月には「春のお楽しみ会」が計画され、私も朗読サークルの「アグリーダックス」の皆さんと共に、ブックトークをさせてもらいました。図書館初の企画で、館長(薬局職員のひとりが任命されている)は、大変心配していましたが、50人ほどの人が参加してくれて大好評でした。今後も計画していきたいとのことです。
土曜日や学校の長期休暇中は、小学生で賑わっています。冷暖房完備、Wi-Fiもつながり、おしゃべり、飲食(おやつ、軽食程度)もOKなので気軽に立ち寄れる、人が集まる図書館になっています。私もボランティアでスタッフとして関わっています。
このふたつの図書館は、徒歩5分の場所にあり、魅力ある図書館を創っていこうと協力体制を整えています。情報交換をしたり、やまぼうしの蔵書からひのき図書館への絵本を貸し出したり、利用者に知ってもらうために、お互いに案内チラシを置いたりしています。
今後もふたつの図書館は、地域の人に愛され、利用され「ここに図書館があって良かった。この町に住んで良かった」と感じてもらえるよう、協力し努力していこうとしています。
そして私自身、スタッフとして、多くのみなさんに利用してもらい、育ててもらう図書館をめざしていきたいと願っています。