ブックトーク | 奥会津ミュージアム - OKUAIZU MUSEUM

オピニオン

ブックトーク 

2023.09.01

長崎 キヨ子(ながさききよこ)

 現在、日本では年間に7万冊ほどの新刊本が発行されています。その中で自分が読める冊数となると……。一生の時間は決まっています。どんなに本好き、読書好きの人でも生涯で読める本の冊数はと考えていくと、どんな本と出会い、読んでいくかが大事になります。

 退職してから、大人対象の「ブックトーク」の依頼が増えています。ブックトークとは、あるテーマに関連づけて複数の本を選び、それらの本をつないで紹介することです。聞き手に本の魅力や特徴を伝え、読みたい気持ちを刺激することを目的におこなわれています。

 ブックトークは、歴史的にはアメリカの図書館における児童サービスのひとつとして、1930年代ごろから始められました。日本へは1950年代に、読み聞かせや語り聞かせなどのストーリーテリング活動とほぼ同時期に入ってきましたが、ストーリーテリングが児童室のお話の部屋などで継続的に実施されてきたのに対して、ブックトークはそれほど普及しませんでした。
 しかし、「子ども読書年(2000年)」「子ども読書活動の推進に関する法律(2001年施行)」、「子ども読書日(4月23日)」の制定などにより、子どもたちへのいろいろな対応が模索される中、クローズアップされるようになってきました。

 一冊の本の紹介や、ただ羅列するだけの紹介といった一般的な本の紹介と違い、ブックトークは、あるテーマに関連づけて複数の本をつないで紹介していきます。そのため、同じテーマの本でも多様な視点から書かれた本があることが分かり、自分に合う本の世界が広がっていくことを感じてもらうことができます。
 ブックトークは子どもの集団を対象におこなうことが多く、そこに集まった様々な個性をもった人々が、〝積極的に読みたいと思う本″を見つけてくれることを願っておこなわれます。

 私は在職(高校の学校司書)中、仕事のひとつとして、ブックトークをおこなっていました。高校生になるまで、きちんと整備され、学校司書が配置され、いつも開館している学校図書館の利用経験のほとんどない生徒たちに、ブックトークはとても効果のある読書支援のひとつだと感じていました。
 実施する側の魅力としては自分でテーマを決め、自分で本を選び、シナリオを作るので、自分の個性が生かせることです。聞き手側は、色々な本のコマーシャルを聞き、自分の好きな本を選ぶことが出来ること。何を読んだら良いのか迷っている人にとっても効果的な読書案内で、取り上げられたテーマについて、イメージや認識を深めたりする入り口を知ることができます。

 ブックトークは、今まで主に学校図書館でおこなわれてきました。子どもたちへの効果も大きい読書支援として、特に学校司書の大事な仕事のひとつとして定着してきました。
 今、子どもたちの生活は、テレビ、ゲーム、インターネットなどビジュアルな仮想世界に囲まれ、調べものはネットですませ、本からどんどん離れる日常生活になっているのではないでしょうか。
 これは子どもばかりではありません。ほとんどの大人が、スマホを手離せない生活です。子どもに本を読みなさいと言う前に「大人が本を読みましょう」と声を大にして言いたいと思っています。
 現在、大人対象のブックトークがおこなわれることはとても少ないです。ブックトークが子どもと本をつなぐ読書支援として定着してきたからでしょう。
 しかし、今こそ大人対象のブックトークが必要だと感じています。マスコミ、ネット上などで話題になったり、賞を受賞した本にはスポットが当たり、読まないまでも知っている人が多いですが、その数は総出版点数からすれば、とても少ない冊数です。ぜひ子どもたちと同じように多くの楽しい本、ワクワクする本、こんな本があったんだと思えるような本と出合えるよう願って、大人対象のブックトークを続けていきたいと思っています。

 紹介したようなブックトークができるのも、私が、専門、専任で正規の学校司書として定年退職時まで仕事を続けることができたことがとても大きいと感じています。すべての学校図書館に専門で専任で正規の学校司書が配置されるように願っています。

 最近おこなった大人のブックトークのテーマと対象者を以下に挙げてみます。
●「親子ってなんだろう」        保育園保護者など
●「いっしょに生きる」         男女共生を考える会など
●「手紙を見直してみませんか」     生涯学習グループ
●「あむ、編む」            ニットカフェ
●「はかる(計る、量る、測る、図る)」 公民館カフェ
●「楽しい本、面白い本、ビックリ本」  絵本文庫スタッフ